【muse2/museSなどのメーカー】 Interaxon社について

今日は、ZONEも取り扱っている脳波デバイス「museシリーズ」のメーカーであるカナダ・トロントに本拠を置くInteraXon(インタラクソン)社についてご紹介します。
ZONEはInteraxon社のmuse商品についての
正規販売店です
脳波デバイス Muse S Athena【STORES】
従来のEEG(脳波)センシングに加え、血流と酸素濃度を計測できるfNIRSセンサーを搭載。 リアルタイムで脳の集中・リラッ
zonebrain.stores.jp
82,500円
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脳波デバイス Muse2【STORES】
・海外で話題の脳波測定デバイス「muse」の後継機「muse2」 ・NASAやマサチューセッツ工科大学でも利用されている高
zonebrain.stores.jp
44,000円
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InteraXonという企業:脳波テクノロジーのパイオニア
始まりは2007年、トロントの小さな研究室から
InteraXonの物語は、2007年のトロントで幕を開けました。
創業者のアリエル・ガーテン(Ariel Garten)は、神経科学とデザインという一見異なる二つの分野を学んだ異色の経歴の持ち主です。
Ariel Garten | Speaker | TED
As CEO of InteraXon, Ariel Garten works to close the gap betw
www.ted.com
[](https://www.ted.com/speakers/ariel_garten)
彼女が抱いていたのは「脳波という目に見えないデータを、誰もが日常的に活用できる形にしたい」という野心的なビジョンでした。
当時、脳波測定装置といえば、医療機関や研究施設にある大型で高価な機器が主流。一般の人が自分の脳の状態を知ることなど、夢のまた夢のような時代です。
そんな中、ガーテンと共同創業者のトレヴァー・コールマン(Trevor Coleman)、クリス・エイムズベリー(Chris Amesbury)は、この技術を消費者向けに展開するという大胆な挑戦に乗り出しました。
夢から現実へ:クラウドファンディングが示したもの
InteraXonの物語が商業化へ向けて動き始めたのは、2012年のこと。創業者たちが脳波技術を一般向けに提供しようとした時、彼らが直面したのは避けられない問題でした。銀行は高い技術リスク、投資家は市場の存在そのものに懐疑的でした。
そこで取った戦略が、クラウドファンディングでした。Indiegogoでの資金募集キャンペーンは、予想外の反響を生み出します。当初目標は$150,000でしたが、1,613人のバッカーから$287,472が集まりました。つまり、単なる資金調達ではなく、「市場が確かに存在する」という証明を手にしたのです。
このクラウドファンディング時代は、InteraXonにとって極めて重要な気づきをもたらしました。彼らが発見したのは、一般の人々が求めているのは「脳波データそのもの」ではなく、「自分自身をより深く理解するための手段」だということ。その気づきが、後の製品開発に直結することになります。
2010年、世界が注目したバンクーバー冬季五輪
InteraXonの名を一躍世界に知らしめたのが、2010年のバンクーバー冬季オリンピックでした。彼らはOntario Pavilionで、脳波によって照明を制御するインスタレーションを展示したのです。
https://newatlas.com/interaxon-bright-ideas-demo-winter-olympics/14098/訪れた人々が瞑想状態に入ると、カナダ各地のランドマークであるトロントのCNタワーやナイアガラの滝がリアルタイムで明るく照らされる。この体験は、単なる技術デモンストレーションを超えて、「人間の意識が物理世界に影響を与える」という哲学的な問いかけでもありました。
このプロジェクトの成功により、InteraXonは脳波テクノロジーのパイオニアとしての地位を確立します。同時に、彼らは「人々は脳波データそのものではなく、それを通じて自分自身をより深く理解したいのだ」という重要な気づきを得ました。
機関投資家の参入:科学者とビジネスリーダーの信頼
2013年、InteraXonはSeries Aで$6百万(日本円にして約6億円)を調達します。
投資家には、単なるベンチャーキャピタルだけでなく、ハリウッドの著名投資家たちも名前を連ねていました。テクノロジー投資家のAshton Kutcher、億万長者投資家のRon Burkle、マドンナとU2のマネージャーであるGuy Oseryが参加するA-Grade Investments。
OMERS Venturesといったカナダの主要ベンチャーキャピタルも参加したりと、科学技術への投資と、エンターテイメント業界の視点が重なったということは、Museが「医学的ガジェット」ではなく「ライフスタイルイノベーション」として認識されていたことを意味する、象徴的な出来事でした。
この時期、InteraXonは製品を市場に投入します。2014年9月のMuse初代モデルの発売は、単なる商品ローンチではなく、「脳波計測デバイスの民主化」という大きな実験の開始だったのです。(museシリーズのデバイス遍歴はまた別でまとめます)
初代muse
2015年にアリエルは自身の妊娠をきっかけにCEOを退任。現在はChief Evangelist Officer(最高伝道責任者)として、InteraXonのブランド思想を世界に伝える役割を担っています。
2025年現在のCEOは2023年に就任したウェルネス業界での豊富な経営経験を持つJean-Michel Fournier。
彼がビジネス面での拡大と新製品開発をリードする一方で、Arielは神経科学とデザインの融合という、InteraXonの本質的な哲学を守り続けています。
医療機関との連携:信頼性の最上位レイヤー
Museが本当の意味で「信頼できるツール」として認識されるようになったのは、商業的な成功によってではなく、科学的な検証を通じてでした。
2017年のSeries B-1で$11.6百万を調達した際、InteraXonが並行して進めていたのが、医療機関との共同研究です。
特に関わりを深めたのがMayo Clinicです。
Mayo Clinicとの連携では、Muse S(睡眠特化モデル)がフロントライン医療従事者のストレス軽減にどの程度効果があるのかを、26週間にわたって検証しました。
その結果、ストレスが54%低減し、92%の参加者がより落ち着きを感じたと報告されています。
Featured study: Mindfulness using a wearable brain-sensing device for
A 2023 study from Mayo Clinic showcased significantly reduced
choosemuse.com
[](https://choosemuse.com/blogs/news/new-study-mindfulness-using-a-wearable-brain-sensing-device-for-healthcare-professionals-during-a-pandemic-to-manage-burnout)
この研究の重要な点は、InteraXon側が「成功する結果を得たい」という誘惑に負けなかったことです。彼らは研究機関に完全な自主性を委ねました。その結果、得られた知見は世界の医学コミュニティで引用されるようになりました。
2022年のSeries Cで$9.5百万を調達した際には、InteraXonが保有するデータの質の高さが評価されていました。彼らが蓄積していた脳波データは、単なる「使用ログ」ではなく、200を超える査読付き学術論文に活用されるほど、科学的価値が認められていたのです。
Mayo Clinic、NASA、Harvard、MIT、トロント大学、UCL、UCSD……。こうした名だたる研究機関がMuseを選ぶのは、技術的な優位性だけでなく、InteraXonという企業体が「商業的成功よりも科学的誠実性を優先する」という姿勢を一貫して示してきたからに他なりません。
脳波データの資産化:10億分の信号
現在、Museが保有する脳波データは、10億分を超えています。1,600万以上のセッションから構成されるこのデータベースは、単なる企業資産ではなく、神経科学全体への貢献になっています。
ユーザーたちが瞑想したり睡眠をとったりする時間に記録される脳活動の信号は、InteraXonの許可を得た研究者たちに提供されます。プライバシーを守りながら、科学の進展に貢献する。この仕組みは、データの民主化を掲げたZONEの価値観そのものと一致しています。
InteraXonはこのデータを武器として独占するのではなく、むしろ研究コミュニティに開放する方向で動いています。
その結果、ADHD児童の集中力トレーニング、がん患者のストレス軽減、フロントライン医療従事者のメンタルヘルス支援など、多様な用途での検証が進んでいます。
経営の進化:創業者の哲学とビジネスの成長の両立
前述の通り、2015年、創業者のAriel Gartenは妊娠を理由にCEOの座を退きます。これは単なる人事異動ではなく、企業文化の選択を示しています。創業者が自ら経営第一線から身を引く判断は、多くのスタートアップでは稀です。しかし、InteraXonはそれを潔しとしました。
その後のCEO交代を経て、2023年にはJean-Michel Fournierが新CEO就任。彼はウェルネス業界での豊富な経営経験を持ち、BODiの経営開発やLes Mills Mediaのリーダーシップを担った人物です。
現在の体制では、Gartenは「Chief Evangelist Officer(最高伝道責任者)」として、科学とデザインの融合という企業の本質的哲学を守り続けています。
一方、Fournierはビジネス面での拡大と新製品開発をリードしています。この二層構造こそが、InteraXonが「科学的誠実性」を失わずに、グローバル企業へと成長できた秘訣なのです。
未来への展開:AIと脳波科学の融合
2025年現在、InteraXonの最新デバイスMuse S Athenaには、Foundational Brain Model(FBM)というAI基盤が搭載されています。これは、80,000以上のセッションから学習した大規模脳データモデルで、大規模言語モデル(LLM)のような深層学習アーキテクチャを採用しています。
つまり、Museは今、単なる瞑想サポートツールから、個人の脳の状態をAIが理解し、それに応じて最適な提案をする「パーソナル・ニューロコーチ」へと進化しようとしています。
このテクノロジーが実現すれば、ストレス管理、睡眠の質向上、認知機能の維持といった、多くの人々が抱える課題に対する、前例のない解決策になる可能性があります。
参考文献・関連リンク
InteraXon・Muse公式情報
資金調達とビジネス展開
InteraXon Series C Funding Round - Business Wire (2022)
Crowdfund Insider - InteraXon Indiegogo Campaign
研究機関との提携
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