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脳科学コラム2025年10月15日

マルチ商法にハマる人と脳科学|なぜあの人が?を解き明かす

マルチ商法にハマる人と脳科学|なぜあの人が?を解き明かす


しっかり者だと思っていた友人、冷静な判断力があると思っていた同僚から久々に連絡がきたと思ったらマルチ商法(MLM)、通称ネズミ講の勧誘だった、という話は、耳にしたことがある人も、もしくはご自身で体験したことがある人も多いのではないでしょうか。

周囲から見れば理解しがたい選択に見えるのに、本人は目を輝かせて「これは素晴らしいビジネスチャンスなのに!」だと語る。

MLMは、場合によってはグループを組んで士気を高め、紹介報酬を得ながら、最初に紹介した人が立場・報酬共にどんどん上に上がっていくビジネスモデルです。

ZONEはこのビジネスモデル自体を否定するつもりはありません。実際、強い求心力を持ち、参加者にとって大きなモチベーションとなる仕組みでもあるからです。

本人が納得の上で取り組まれる分には問題ないのですが、理解がないままに加入し視野を狭めてしまったせいで大きなトラブルになったという話が後を断ちません。

少し前にはその勧誘手法の悪質性から、消費者庁に勧告された事例もあったことも事実です。

多くの人は「洗脳されている」と表現しますが、この現象を引き起こす仕組みには私たちの脳が持つ普遍的な特性が深く関わっています。

だからこそ、MLMに引き込まれるメカニズムを理解しておくことには大きな意味があるのです。なぜなら、あなた自身も人生のどこかのタイミングで当事者になり得る可能性があるからです。

今回は脳科学的な観点から、MLMがなぜこれほどまでに人を惹きつけるのか、「ハマりやすい人」は本当に存在するのか、そして、実は多くの人が悩んでいる、家族やパートナーがハマってしまったらどうすればいいのかについて考えていきます。

「ハマりやすい人」という誤解

多くの人はMLMにハマるのは「判断力が弱い人」「お金に困っている人」「社交的で人を信じやすい人」といったいう先入観を持ちがちです。

しかし、心理学や脳科学の研究は、もっと複雑な真実を明らかにしています。

カリフォルニア工科大学の神経経済学研究によれば、人間の意思決定には「報酬系」と呼ばれる脳の仕組みが大きく影響しており、この報酬系は誰もが持っている普遍的なシステムなのです。

つまり、MLMにハマるかどうかは、その人の性格や知識量だけで決まるのではなく「その人がどんな心理状態にあるか」「どのような情報にさらされているか」によって大きく変わってくるということです。

脳が喜ぶ「完璧な設計」

MLMの仕組みを脳科学の視点で見ると、驚くほど上手く人間の脳の特性を利用していることが分かります。

射倖心とドーパミン

まず注目すべきはドーパミンの働きです。ドーパミンは「やる気ホルモン」とも呼ばれ、報酬を期待するときに分泌される神経伝達物質です。スタンフォード大学の研究では、ドーパミンは実際に報酬を得たときよりも、報酬を期待しているときにより多く分泌されることが確認されています。

MLMのビジネスモデルは、まさにこの「期待」を巧みに刺激します。「早く入った方が絶対に得」「あと少しであなたも大きな収入が得られる」「次のランクアップまであと一歩」という状態を常に作り出すことで、参加者の脳は継続的にドーパミンを分泌し続けるのです。

この状態はカジノのスロットマシンが人を夢中にさせるメカニズムと本質的に同じだと言えるでしょう。

上記のような心を「射倖心(しゃこうしん)」とも呼びます。

射倖心は、インターネット広告や電車内広告、身近なものだとスマートフォンを設計する際に必ずと言っていいほど考慮されている部分です。

射倖心については別の記事でもまとめているのでぜひご一読ください。

社会的承認欲求

さらに、MLMは社会的承認欲求という、もう一つの強力な脳の特性を活用しています。

私たちの脳には、集団に所属し、仲間から認められたいという根源的な欲求があります。これは進化の過程で獲得された生存戦略の一つで、集団から孤立することは生命の危機を意味していた時代の名残です。

MLMの組織は、この欲求を満たす場として機能します。定期的なミーティング、成功者の表彰、チーム内での励まし合い。これらすべてが、参加者の脳に「ここは自分の居場所だ」「自分は認められている」というメッセージを送り続けるのです。

ハーバード大学の社会心理学研究では、所属感を感じているときの脳は、批判的思考を司る前頭前野の活動が低下することが示されています。

「あの人がハマるはずがない」という思い込み

では、なぜ「しっかりしている」と思われていた人がMLMにハマってしまうのでしょうか。

実は「しっかりしている人」こそが、ある意味でMLMの良いターゲットになりうるのです。

完璧なまでに設計されたチーム内での序列は、人間の競争心をくすぐります。学校の成績などに例えるとわかりやすいかもしれません。

「あなたも頑張れば必ず成功できる」といわれると、責任感が強く、努力家で、目標達成に対して高いモチベーションを持つ人ほど、メッセージに共鳴しやすいのは、想像できるはずです。

人生の転換期のタイミングで狙われやすい

また、人生の転換期にいる人も影響を受けやすいことが分かっています。

転職、結婚、出産、離婚、親の介護など、大きなライフイベントを経験している時期は、脳がストレス状態にあり、判断力が通常よりも低下していることマサチューセッツ工科大学の研究で明らかになっています。

このような時期は、「新しい可能性」「確実な収入源」といった言葉が、普段以上に魅力的に聞こえてしまうのです。

「婚約者がマルチにハマって婚約破棄」という話は、珍しくないように思います。

確証バイアス

さらに興味深いのは確証バイアスの働きです。

これは、自分の信念を裏付ける情報ばかりを集め、反対の情報を無視してしまう認知の偏りのことです。

MLMに参加すると、組織内では成功事例ばかりが共有され、失敗や問題点は「まだ努力が足りない」と解釈されます。この環境下では、どんなに理性的な人でも、次第に批判的視点を失っていくのです。

もし勧誘されたら?冷静さを保つための脳科学的アプローチ

では、自分がMLMの勧誘を受けたとき、どうすれば冷静な判断を保てるのでしょうか。

時間を置く

まず効果的なのは時間を置くことです。「今すぐ決めなければチャンスを逃す」という緊急性の演出は、MLMの常套手段です。しかし、本当に良いビジネスチャンスなら、1週間後でも1ヶ月後でも存在しているはずです。

デューク大学の意思決定研究では、24時間以上の時間を置いて再考することで、感情的な判断を約40%減らせることが示されています。

第三者に相談する

次に、第三者の視点を入れることが重要です。MLMに関わっていない友人や家族に話を聞いてもらう、あるいは消費者センターや弁護士に相談することで、自分一人では見えなかった問題点が浮かび上がることがあります。脳科学的に言えば、他者の視点を取り入れることで、確証バイアスの影響を弱めることができるのです。

また、具体的な数字を冷静に分析することも効果的です。これは数字を冷静に見るということはもちろん、感情を司る辺縁系ではなく、論理を司る前頭前野を活性化させることが、冷静な判断につながります。

「月収100万円も夢じゃない」といった不確実な言葉ではなく「実際に月収100万円を得ている人は全参加者の何%か」「そこに到達するまでの平均投資額はいくらか」「成功できなかった場合の損失はどの程度か」といった具体的なデータを求めるか、家に帰って自分で調べてみましょう。

家族がハマってしまったら?脳科学が教える対応法

もっと難しいのは、大切な家族や友人、パートナーがすでにMLMにのめり込んでしまっている場合です。

ここで最もやってはいけないのが、頭ごなしに否定することです。

人間の脳は、自分の信念を否定されると、かえってその信念を強化してしまう傾向があります。これはバックファイア効果と呼ばれる現象で、イェール大学の認知科学研究でも確認されています。

効果的なアプローチは、共感と質問の組み合わせです。まず、その人がMLMに魅力を感じている理由を理解しようとする姿勢を示します。「そのビジネスのどこに一番魅力を感じているの?」「これからどんなふうになっていきたいと思っているの?」といった開かれた質問を通じて、対話の糸口を作るのです。

その上で、プレッシャーをかけずに情報を提供します。「こんな記事を見つけたんだけど」「消費者センターではこういう相談が増えているらしいよ」といった形で、さりげなく客観的な情報に触れる機会を作ります。

重要なのは、本人が自分で気づく余地を残すことです。脳科学的に言えば、自分で発見した情報の方が、他人から押し付けられた情報よりもはるかに強く記憶に残り、行動変容につながりやすいのです。

また、MLM以外での居場所や承認の機会を提供することも重要です。多くの場合、MLMにハマる背景には孤独感や承認欲求の不足があります。家族や友人として、その人の存在を認め、価値を感じてもらえる場を意識的に作ることで、MLMへの依存度を下げることができる可能性があります。

ZONEが考える、脳と向き合う知恵

私たちZONEは、家庭用脳波計や瞑想・マインドフルネスを通じて「自分の脳の癖に気づく」ことの大切さを伝えています。

MLMにハマるメカニズムを理解することは、単に特定のビジネスモデルを避けるためだけではありません。それは、私たちの脳が持つ報酬系、社会的承認欲求、確証バイアスといった特性を理解し、より賢く自分の人生を選択していくための知恵なのです。

瞑想の実践は、メタ認知能力と呼ばれる「自分の思考を客観的に観察する力」を高めることが、ジョンズ・ホプキンス大学の研究で示されています。この能力は、衝動的な判断を避け、長期的な視点で物事を考える助けとなります。

ここで「瞑想すれば全てが上手くいく!」と言えば、見てくださっている皆様の射倖心を煽り、より深く刺さるのかもしれませんが、残念ながら瞑想が全てを解決するわけではありません。

でも、自分の心の動きに気づき、「今、自分はどんな感情に動かされているのか」「この判断は本当に自分の価値観に基づいているのか」と立ち止まって考える習慣は、情報が溢れる社会を生き抜く中のあらゆる場面で役立つはずです。

もし今、あなた自身や大切な人がMLMの誘惑と向き合っているなら、焦らず、自分を責めず、そして何より、脳の仕組みを理解した上で対応してみてください。

私たちは皆、完璧な判断ができる存在ではありません。

だからこそ、自分の脳の特性を知り、それと上手に付き合っていく知恵が必要なのだと、ZONEは考えています。

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参考文献・関連リンク

神経経済学・意思決定研究

Caltech Neuroeconomics Research

Stanford Dopamine Research

Duke University Decision-Making Studies

社会心理学・認知バイアス研究

Harvard Social Belonging Research

Yale Backfire Effect Studies

ストレス・瞑想研究

MIT Stress and Decision-Making

Johns Hopkins Meditation and Metacognition

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