スピリチュアルに対する認識の年齢差・性差について

「自分の親がこんなことやってたら絶対嫌だ」
SNSでスピリチュアリティについての発信に、こんなコメントがつくことがあります。
その投稿を見た若い世代は、大の大人が非科学的なことを言ってるのを見て「恥ずかしい」「科学的根拠がないのに」という違和感から書き込んだのでしょう。
でも実は、この反応の背景には、年齢が深く関わっています。
人間にとって精神的な充足というのは、実は生きていくうえで欠かせないもの。若いうちは、人生が比較的わかりやすい軌道に乗っていることが多いかもしれません。「頑張ればそれだけ褒められる」という学生時代の成功体験が通用し、仕事も「昇進すればより良い生活が待っている」と信じやすい年代です。
しかし年を重ねるにつれて、人生に対する見方は変わっていきます。
日本人と「精神的なもの」の距離感
日本は、一般的には「宗教性が薄い」と言われています。信仰心そのものではなく、習慣や文化として初詣に行ったり、盆暮れに帰省したりするイメージが強いのではないでしょうか。
実際に、心理学者の松島公望氏がおよそ7000人の日本人を対象に実施した調査によると、日本人が自らの宗教について尋ねられると「無宗教」と答える傾向が強くなっています。
しかし興味深いことに、松島氏の研究からは、日本人には「宗教教団へのアイデンティティ統合」とは異なる形で、豊かな日本的宗教性が存在することが明らかになっています。
すなわち、初詣でや墓参り、自然への敬意といった日常的な宗教行動や感情が、実は日本人の精神生活を支えているのです。
中年期の「危機」:自分の人生を問い直す時間
また、中年期の心理状況についても言及しておくべきでしょう。
心理学者のダニエル・レビンソンが提唱した発達段階説によると、40~65歳の中年期は「新しい自分になる時期」であり、人生を根底から問い直す時期とされています。この時期、多くの人が経験するのが、「中年期危機(ミッドライフ・クライシス)」です。
具体的には、仕事の成果や出世の限界が見えてくること、キャリアの選択に対する後悔、親としての役割、配偶者との関係の再構築など、人生前半期の選択が問い直されるようになります。
さらに広島大学名誉教授の岡本祐子氏の研究によると、中年期には自己の有限性、つまり「自分にはもう限られた時間しかない」という現実を自覚せざるを得なくなるのです。
岡本氏が指摘する「アイデンティティのラセン式発達モデル」では、中年期に新たなアイデンティティの再確立が起こるとされています。
揺さぶられ、見直された自分が、果たしてこれからどう生きるのか。その問い直しのプロセスこそが、中年期の核となるのです。
人生の「不確定性」に気づく瞬間
人生をコントロールできるという幻想は、やがて崩れていきます。
お金を稼ぎ続けられるのか?
キャリアは期待通りに進むのか?
人生が晩年に近づけば近づくほど、自分の努力だけではどうにもならない要素が、次々と現れるのです。
興味深い研究成果があります。
カリフォルニア大学サンディエゴ校のAwais Aftab氏ら研究チームが実施した大規模調査では、21歳から100歳までの1042人を対象に「人生の意味」についてアンケート調査を行いました。
その結果「人は60歳前後で人生の意味を知った実感を得られる傾向がある」ことが示されたのです。
20代や30代の被験者は「人生の意味を探している」と答える傾向が高く、人生の意味を感じることが少なかったのに対し、40~50代になると、キャリアや人間関係を築く過程で、人生の意味を求めなくなり、人生の意味を認識する機会が増えるとのこと。
そして60歳前後でそのピークに達するというわけです。
そして振り返ってみると、多くの人が人生には「運」というものが大きく関わっていたな、と思うのです。
その先もどんどん不確定な要素は増えていきます。健康のこと、人間関係のこと、人生の選択肢の多さ。
コントロールできない領域が広がっていくなかで、人は何かに寄りかかりたい、精神的な拠り所が欲しいと感じるようになるのです。
性別による「気づきのタイミング」の違い
この人生の不確定性に気づき、スピリチュアルに関心を持ち始めるタイミングには、性別による差があると複数の研究が指摘しています。
実際には、多くの実証研究から、女性の方が感情表現への開放性が高く、心理的ニーズを外部に表現しやすい傾向があることが明らかになっています。
日本人の心理学者による研究では、30代女性がスピリチュアルにハマる傾向が特に顕著であるとされており、その背景には、結婚・妊活・キャリアと人生設計の複雑さ、ホルモン変化に伴う身心の変化など、複数の要因が存在することが考えられます。
一方、男性は現実的で目に見えるものを信じる傾向があり、スピリチュアルにのめり込む人は女性に比べて圧倒的に少ないとされています。
これは脳の性差に関する神経科学的な研究からも支持されており、情動処理や感受性において男女の脳の働きに違いがあることが示唆されています。
いずれにせよ、自分でコントロールできない現実に直面したとき、人は精神的な支えを求めるようになるのです。その「気づき」や「必要性」が訪れるのが、女性の方が早い傾向にあるということなのでしょう。
ZONE的な見方
ここで大切なのは、スピリチュアリティを「科学的根拠がないから否定する」のか、それとも「人生の不確定性に向き合う、一つの誠実な選択肢として認める」のか、という視点の違いです。
科学で完全に証明されていない領域も、人生経験を重ねた人たちが「こういう向き合い方が、心の落ち着きや人生の充足感につながった」と語るなら、その体験の価値を完全に否定することはできません。
一方で、その思想が著しく倫理観を欠如しているものだったり、他人や子どもに迷惑をかけるものでないのかもしっかり考えないといけません。
時代が不安定になると極端な思想を支持する人が増えます。そういった場面ではまだまだ未解明のことが多い脳科学の、解明されていない部分を上手く使ってあなたを思い通りにしようとするのです。
極端に偏った発信をしたり、わかっていないはずのことをわかっているかのように言い切る発信には注意が必要なのです。
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