TikTokのADHDテスト、92%が誤情報?脳科学研究と実測脳波で見る『本当のADHD』

「TikTokを見ていたら『ADHDあるある』『ADHDの人はこういう傾向がある』という動画が次々出てきて、自分にも当てはまりすぎてゾッとした」――そんな経験、ありませんか?
実はその情報、92%が科学的に誤っている可能性があるという研究結果が報告されています。
TikTokの#ADHDtest、92%が誤情報という研究結果
カナダの研究チームが2024年、TikTokで人気の#ADHD関連動画を分析した結果、ADHDのスクリーニング(簡易判定)動画の92%が、医学的・心理学的な診断基準と異なる内容を含んでいたと報告しました。
しかも問題なのは、正確な医療情報を含む動画ほどエンゲージメントが低いこと。「ADHDあるある」のような共感を引きやすいネガティブな誇張動画ほど多くのいいねや再生数を獲得し、結果として誤った認識が広まっていく構造があります。
参照: GIGAZINE「TikTokで広まるADHD関連動画、ほとんどに誤情報が含まれている」
これは日本でも同じ。X(旧Twitter)や Threads で「ADHDあるある」を発信するアカウントの中には、存在しない研究を引用したり、エビデンスのない治療法を推奨するケースがあり、コミュニティノート(情報の信頼性を補完する仕組み)が複数つけられているアカウントも見られます。
「自分はADHDかも」と思ったときに使える3つの判断軸
SNS情報の真偽を見分けるには、以下を意識すると良いです。
1. 「数字」が出典なしで語られていないか
「ADHDの70%が◯◯」「副腎疲労が原因」のような具体的な数字は、論文DOI(学術論文の識別子)か、政府機関の公式ページが出典として明記されているかを確認しましょう。
例えば「ADHDの人は副腎疲労が原因」という主張については、米国内分泌学会(Endocrine Society)が公式に「副腎疲労は医学的に認められた病態ではない」と声明を出しています。
参照: Endocrine Society - "Adrenal Fatigue" Statement
2. 「自己診断」を煽る構成になっていないか
正確な医療情報は「気になったら医療機関に相談を」と締めくくられます。一方で誤情報は「あなたもADHD!」と断定的に締めくくる傾向があります。
ADHDの正確な診断には、Conners Adult ADHD Rating Scale (CAARS) や DIVA-5 のような構造化面接が必要で、TikTok 動画 1本で判定できるものではありません。
3. 「治る」「即効性」を強調していないか
ADHD は脳の特性であり、「治す」というよりは「特性と上手に付き合う」アプローチが主流です。サプリ、食事、断食、特定の習慣で「治る」と謳うコンテンツは要警戒。
脳波研究から見たADHDの「本当の姿」
では、ADHD は脳のどんな状態なのでしょうか。Nature 系の系統的レビュー(2021)では、以下のような知見が報告されています。
前頭前皮質・線条体のドーパミン回路の特性
ADHDの脳では、前頭前皮質(思考・判断を司る)と線条体(報酬と動機)をつなぐドーパミン回路の応答パターンが定型と異なります。「やる気が出ない」のではなく、「報酬予測の仕方」が違うのです。
脳波(EEG)で観察される特徴
簡易脳波計(EEG)で観察すると、ADHDの方には以下の傾向が報告されています:
- 安静時の θ波(4-8Hz)の比率が高い
- 集中タスク中も β波(13-30Hz)への切り替えがスムーズでない
- 集中の「波」が定型より大きく揺れやすい
これは「悪い」ことではなく、「ある状況では強み(クリエイティビティ・ハイパーフォーカス)」「ある状況では弱み(事務作業・反復作業)」になる特性です。
ZONE Brainで実測したADHD特性の脳波データ
ZONE Brain では、実際に瞑想や日常タスク中の脳波を簡易脳波計で計測しています。ADHDの自認がある方の計測結果には、以下のような特徴が見られます:
- 瞑想開始直後は集中度が大きく揺れる(数値が0〜100で激しく変動)
- 5分以上経つと徐々に安定し、定型より深いリラックス度に到達する場合もある
- 「集中できない」と言いながら、ハイパーフォーカス時は定型を上回る集中度を示す
つまり、ADHD の方は「集中できない」のではなく「集中の波が大きい」のです。
SNSの誤情報に振り回されないための行動指針
★1. 自己判断はOK、自己診断はNG
「自分もADHDかもしれない」と感じることは、自己理解の入口として大切です。ただし「自分はADHDだ」と確定するには、心療内科・精神科での診断が必要です。
★2. 「あるある」を脳科学的根拠で読み替える
「先送りしてしまう自分」「片付けが苦手な自分」を責めるのではなく、「報酬予測誤差が小さい脳の特性」として理解すると、対策が立てやすくなります。
★3. 自分の脳波を一度測ってみる
ZONE Brain のパーソナルメディテーションチューニングでは、簡易脳波計でご自身の脳の特性を可視化できます。SNS の「あるある」ではなく、ご自身の実データで自分を理解する第一歩として活用いただけます。
まとめ
- TikTok の #ADHDtest 動画は92%が誤情報という研究結果がある
- 「ADHDあるある」は共感を呼ぶが、医学的根拠が乏しいことが多い
- ADHD は脳のドーパミン回路の特性であり、「治す」より「付き合う」アプローチが基本
- 自己理解には脳波計測のような客観的データが役立つ
SNSで広まる「あなたもADHD」よりも、自分の脳のデータと学術研究の根拠を組み合わせるのが、本当の意味で自分を理解する近道です。
参考文献
- Yeung, A., Ng, E., & Abi-Jaoude, E. (2022). TikTok and ADHD: A Cross-Sectional Study of Social Media Content Quality. Canadian Journal of Psychiatry.
- GIGAZINE「TikTokで広まるADHD関連動画、ほとんどに誤情報が含まれている」
- Endocrine Society - "Adrenal Fatigue" Statement
- Hoogman, M., et al. (2017). Subcortical brain volume differences in participants with attention deficit hyperactivity disorder in children and adults: a cross-sectional mega-analysis. The Lancet Psychiatry.
- Nature Translational Psychiatry (2021): meta-analysis of structural MRI studies of ADHD
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