ブラインドボックスと脳科学|Labubuの箱はなぜ開ける前がいちばん幸せなのか
こんにちは。ZONEです。
Labubuの箱を開ける瞬間の、あの独特の高揚。でも、よく思い出してみてください。いちばんドキドキしていたのは、じつは 開ける前 ではありませんでしたか。
最初に結論をお伝えします。ブラインドボックスがこれほど人を惹きつけるのは、脳が 「中身が分からない」という不確実さそのもの に強く反応するからです。今回は、その仕組みを数字と研究から正直に見ていきます。

まず熱狂がどれくらいの規模なのか

Labubuを展開するPOP MARTは、香港上場企業です。決算という一次資料で規模を確かめられます。
2025年通期の売上は約371億元(およそ51億ドル)で、前年から 184.7%増 。Labubuを含む「The Monsters」シリーズだけで年商141億元を超え、同社で初めて年商100億元を突破したIPになりました。131cmの世界に1体のLabubuが、オークションで約17万ドルで落札されたことも報じられています。
もはや子どものおもちゃではなく、ひとつの経済現象です。
「開ける前」がピークになる理由

ここが脳科学の話です。以前の記事でも書いたとおり、ドーパミンは報酬を 得たとき より 予期したとき に強く働きます。
しかも、報酬が 確実なとき よりも 不確実なとき のほうが、脳の反応は大きくなりやすいことが知られています。「当たるか分からない」「中身が分からない」。この宙づりの瞬間こそ、脳がいちばん活性化するタイミング。
だから、箱を開けて中身が確定した瞬間、高揚はすっと引いていく。そして脳は、もう次の箱を探し始めるんです。
正確に言えば「開けたらドーパミンが出て幸せ」というより「開ける前の予測できない期待の局面で、脳の信号が繰り返し立ち上がる」。この違いが、抜けにくさの正体です。
なぜ一個では止まらないのか

もうひとつ、収集ならではの仕組みがあります。「あと1体でコンプリート」という状態は、脳にとって最も気になる状態です。
心理学には、やり残したことほど頭に居座り続ける、という古典的な現象(ザイガルニク効果)があります。コレクションの完成欲求そのものを直接調べた研究があるわけではないので、これはあくまで近い仕組みとしての説明ですが「あと1個」が延々と気になり続ける感覚には、しっくりくると思います。
しかも、たとえ揃えても、新シリーズが出れば振り出しに戻る。脳は永遠に「あと1体」を追いかけ続けることになります。
不確実な報酬が衝動買いを後押しすることは、消費者調査でも報告されています。この仕組みの詳しい分解は、射倖心の記事にまとめています。
中国はもう規制を始めている

面白いのは、この現象の本場である中国が、すでに規制に動いていることです。
2023年6月、中国の国家市場監督管理総局がブラインドボックス販売の指針を施行しました。8歳未満への販売禁止 、8〜18歳への販売は保護者の同意確認、そして 当選確率やルールの情報開示義務 などが柱です。国営メディアも、サプライズの魅力の裏に衝動消費を誘う面があると論じています。
なお「単価は200元まで」という上限をよく見かけますが、これは上海市の地方ルール(2022年)で、国の指針そのものにある規定ではありません。細かいですが、事実は正確にしておきたいところです。
ネットでは「◯◯で破産者が続出」といった言葉も飛び交いますが、これを裏づける公式な統計は、少なくとも今のところ確認できません。仕組みが強いことと、破産が多発していることは、分けて考える必要があります。
日本では300円のカプセルで同じことが起きています
(2026年9月17日 追記)

Labubuは海外の話に見えるかもしれません。ただ、同じ仕組みは日本のガシャポンで、もっと安い値段で回っています。
バンダイの 「めじるしアクセサリー」 は、シリコンの輪がついた小さなチャームで、傘やペットボトルの目印にするカプセルトイです。1回 300円 前後。
2026年9月の第2週から、ガシャポン専門店で販売の停止や見合わせが相次ぎました。理由は「安全面を考慮した結果」と「混雑緩和のため」。開店と同時に走る、機械の前に居座る、ひとりで買い占める、といった行動が店頭で起きていたためです。生産終了ではなく、店舗ごとの対応です。
ネットオークションでは 300円のチャームが3,000〜5,000円前後 で取引されています。
このシリーズがブラインドボックスと同じ回路を押しているのは、次の3点です。
ラインナップは ヨッシーコレクション、ちいかわ、サンリオキャラクターズ、ディズニー(ツムツム・トイストーリー)、ケロロ軍曹、クレヨンしんちゃん、進撃の巨人・NARUTO・呪術廻戦、GLAY、日清カップヌードル・チロルチョコ など、歴代で200件を超えます。どのシリーズにも「本命に近い色や柄」が用意されている ので、完全なはずれがほとんど起きません。これが「もう一回」を速くします。
回す前の脳で何が起きているのかを、脳波のデータで追った続きの記事です。
オリパは同じ仕組みの金額を大きくしたものです
(2026年9月17日 追記)

ここで言うカードは、クレジットカードではなく トレーディングカード の話です。
「オリパ」 はオリジナルパックの略で、カードショップや業者が、ポケモンカードなどの市販カードを独自に詰め合わせて売り直す非正規のパック です。中に何が入っているかは、買って開けるまで分かりません。
オンラインのオリパでは、「ガチャを引く」ボタン を押すと画面に派手なアニメーションが流れ、当たりの度合いによって演出が変わります。スロットのリールが止まる瞬間を、スマホの中に再現した設計 です。
ブラインドボックスやガシャポンとの違いは、金額と「当たり」の決め方にあります。
2026年9月7日には、弁護士法人・響 がオンラインオリパを運営する大手5業者について、特定商取引法違反の疑いで 消費者庁に調査を申告 しました。同法人には 約460人から相談が寄せられ、被害として訴えられた総額は約31億円 と報じられています(東京新聞 2026年9月12日)。
やめ方まで踏み込んだ続きは、オリパの記事にまとめました。
ガチャもオリパも、それ自体は違法ではありません。 ただ、300円のカプセルで起きている「回す前の期待」が、金額を100倍にしても同じ回路で動く、という点は覚えておいて損はないと思います。
売り手を責める話ではありません

念のため。これは、売っている側を悪者にする話ではありません。「開ける前がいちばん楽しい」設計は、いまや化粧品でも食品でもゲームでも使われている、それだけ普遍的で強い手法だ、というだけのことです。
大事なのは、自分がいま どこで興奮しているのか に気づけること。箱を開ける前のあの高揚が、実は「手に入れた満足」ではなく「予測できない期待」なんだと分かるだけで、勢いは少しゆるみます。
- 欲しいと思ったら、一晩おいてみる。
- 「あ、いま予測誤差で盛り上がってるな」と、自分を実況してみる。
- 揃えることより、本当に好きな一体をゆっくり味わう。
似たテーマの記事も、あわせてどうぞ。
「開ける前がいちばん幸せ」な自分の脳が、ふだんどれくらい刺激を求めているのか。気になった方は『ドパガキ診断(全12問・1分)』で、%とタイプにして確かめてみてください。
おわりに
箱を開ける前のドキドキは、消す必要のないものです。
ただ、その高揚が「手に入れた満足」ではなく「まだ分からない」への反応だと知っている人は、2個目を買う前に一拍おけます。
その一拍をどれくらい作れるかは、ふだんの脳の状態でかなり変わります。
ZONEの計測では、目を閉じて休んでいるあいだの脳波から 刺激を求めやすい状態かどうか が数字で見えます。開ける前の自分を、一度だけ数字で確かめてみてください。
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