ADHD傾向でも瞑想しやすい姿勢とは?立命館大学の最新研究

「瞑想をやりたいけれど、どうしても集中できない」
「坐禅でじっと座っているのが苦痛で続かない」
ZONEにもこうしたお声をいただくことが少なくありません。特に、普段から注意が散りやすかったり、落ち着きがなかったりするADHD傾向を自覚している方は、瞑想の効果は感じたいけれど実践が難しいというご相談をよく受けます。
そんな中、立命館大学から興味深い研究結果が発表されました。ADHD傾向のタイプによって、瞑想しやすい姿勢が違う可能性がある、ということがわかったのです。
瞑想とADHDの難しい関係
マインドフルネス瞑想は「今ここに、意識的に、特定の方法で、良し悪しを判断せずに注意を向ける」実践として知られています。実際に痛みやストレス、うつの軽減効果が多くの研究で確認されており、ADHD症状の改善にも効果があることが分かっています。
しかし、ここに一つの問題があります。
瞑想の基本は注意を集中させ、じっとしておこなうことですが、これはまさにADHD傾向の高い人が最も苦手とする部分なのです。効果があるとわかっていても、実践自体が困難という状況に多くの方が直面していました。
これは実際にZONEのメンバー様やゲスト様でも、同じ現象が起きていました。
ZONEはこれまでイベントなどで2000人ほどの脳波測定体験を簡易脳波計で行ってきましたが、やはり皆さん瞑想の方法やコンテンツに相性があることがわかってきています。
例えば坐禅は「座っていられない」という人の意見や、ヨガですら「動きが遅くて刺激が少ない」という方も多くいらっしゃいます。(この方はピラティスだと満足できるそうで、ピラティスに通われています)
「書く瞑想」にしても、絵を描くと落ち着く人と、文字を書くと落ち着く人に分かれるのです。
特に印象的なのは、なにか動きがある方が落ち着く、という方が非常に多いことです。従来の「静かに座る瞑想」が苦手でも、歩きながらや軽く体を動かしながらの方が集中もリラックスもできる、という声をよく耳にします。
画期的な研究のやり方
立命館大学OIC総合研究機構の福市彩乃専門研究員らのチームは、この問題に体の姿勢という角度からアプローチしました。もしかすると、姿勢を変えることで、ADHD傾向の高い人でも瞑想がしやすくなるのではないか、と考えたのです。
研究チームはまず、瞑想のしやすさを客観的に測る新しい方法を開発しました。「マインドフルネス促進反応尺度(MERS)」と「マインドフルネス阻害反応尺度(MDRS)」という2つの尺度を作成し、これによって参加者の瞑想体験を数値で表せるようにしたのです。
実験では、19名の参加者に4種類の違う姿勢でボディスキャン瞑想をおこなってもらいました。
ボディスキャンは、足の先から頭まで、体の各部分に順番に注意を向けていく瞑想法です。
試された姿勢は以下の通りです:
背筋を伸ばして椅子に座る姿勢
猫背で椅子に座る姿勢
背もたれにもたれかかって椅子に座る姿勢
仰向けに寝た姿勢
参加者は事前調査により、不注意型、多動・衝動性型、混合型、ADHD傾向なしの4つのタイプに分類されました。そして各姿勢での瞑想後、開発した尺度を使ってどれくらいマインドフルな状態になれたかを評価してもらったのです。
意外な発見:タイプ別に最適姿勢が存在
研究結果は、普段瞑想に取り組む人にはもちろん、瞑想のサービスを展開している人達にとっても驚くような示唆を与えるものでした。
多動・衝動性型の人は、猫背姿勢では瞑想をおこないにくく感じる一方で、仰向けの姿勢では非常におこないやすく感じていました。また、背筋を伸ばした姿勢も、このタイプの人には向いていることがわかりました。
興味深いことに、混合型の人については、背筋を伸ばした姿勢が逆におこないにくく感じられることが明らかになりました。
この結果について研究チームは、多動・衝動性型の人は体を動かしたい気持ちが強いため、安定感のある仰向け姿勢や背筋を伸ばした姿勢が落ち着きをもたらすのではないか、と考えています。
一方、混合型の人は不注意と多動の両方の特性があるため、より複雑な調整が必要なのかもしれません。同じADHD傾向でも、タイプによって最適な姿勢が異なるという発見は、一人ひとりに合わせた瞑想のやり方の大切さを教えてくれているのです。
ZONEが大切にしたいバランスの視点
この研究結果は非常に興味深いものであると同時に、一人ひとりの感覚や体験も同じように大切です。
というのもADHD傾向と瞑想の姿勢に特化した研究はまだ非常に少なく、この立命館大学の研究が先駆け的な存在となっています。
福市専門研究員も「マインドフルネス瞑想の実施しやすさや実施しにくさを評価する方法を開発したのは、私たちの研究が初めてです」と述べているように、この分野の研究はまだ始まったばかりです。
そのような中で瞑想・メディテーションを実践する人々にとって最も大切なのは、自分にとって続けやすく、リラックスできる姿勢を見つけることです。
これからさらに研究が発展し、より多くの人が自分に合った瞑想スタイルを科学的・統計的に見つけられるようになることを期待しながら、現在ご自身の瞑想の姿勢に課題を感じている方は、ぜひ立命館大学の研究結果を参考に、早速ご自身の心身で実践してみると良いかもしれません。
何より大切なのは、まず自分がどこで、どんな状態で落ち着くのかを知ることです。
今日から試せる実践のヒント
もし普段から注意が散りやすく、じっとしているのが苦手だと感じる方は、仰向けの姿勢での瞑想を試してみてください。
ベッドやヨガマットの上に仰向けになり、体をリラックスさせてからボディスキャンを始めてみるのです。この姿勢は体が自然に安定するため、多動・衝動性の特性がある方には特に向いている可能性があります。
一方、背筋を伸ばした座り姿勢で瞑想がうまくいかない場合は、背もたれを使ったり、クッションで体を支えたりして、より楽な姿勢を探ってみてください。
瞑想は我慢大会でも、競争でもありません。あなた自身が心地よく続けられることが何より大切です。
また、同じ人でもその日の体調や気分によって向いている姿勢は変わることもあるでしょう。
重要なのは答え探しに夢中になりすぎないことです。瞑想を通して脳が変容するように、あなた自身も日々変わっていきます。その都度あなたが、あなた自身の声を聴き取れるようにするのが、瞑想の目的の一つです。
瞑想実践の新しい可能性
立命館大学のこの研究は、瞑想実践の可能性を大きく広げてくれました。「ADHD傾向があるから瞑想したいのに、ADHD傾向があるから瞑想は無理だ」と諦めていた方にとって、新しい希望の光となるかもしれません。
同時に、この研究は瞑想指導やアプリ開発者においても重要なヒントを与えています。みんなに同じ姿勢を教えるのではなく、利用者の特性に応じた個別のアプローチの大切さが明らかになったのです。
ZONEでも、この研究結果を参考にしながら、より多くの方が瞑想の恩恵を受けられるよう、様々な実践方法や姿勢について情報をお伝えしていきたいと考えています。科学的な知見と実際の体験の両方を大切にしながら、一人ひとりに合った瞑想の形を一緒に探していければと思います。
瞑想は決して特別な能力を持つ人だけのものではありません。今回の研究が示すように、適切なアプローチを見つけることで、誰でも瞑想の恩恵を受けることができるのです。
あなたなりの瞑想スタイルを見つける旅を、ぜひ楽しんでみてください。
参考文献・関連リンク
脳科学・瞑想研究
参考資料
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