【ADHD傾向がありじっとしてられない人へ】マッサージは瞑想になり得るのか

「じっとしていられない」あなたへ
世の中に多くの「これこそが本当の瞑想!」という情報が蔓延る中で「じっとしているだけの瞑想は、ADHD/多動の私には無理だった」というお悩みをZONEにそっと打ち明けてくださる方が、実際のところかなり多くおられます。
確かに多くの瞑想メソッドは、姿勢を正して呼吸を整え、閉眼し(もしくはうっすら目を開ける)「雑念が出てきても、今ここに戻る」といった説明をされることが多いでしょう。
人間の内観や内側にアプローチしていく方法ですので、やはり説明も抽象的になりがち。初心者の方や「これが瞑想だ!」という実感が無い方には、どこか所在なさげに感じるのも事実。
これは、何も受講者だけではなく、指導者側に立っておられる方も、課題に感じている部分かもしれません。
ZONEは、皆さんに共通の最適なメディテーションメソッドがあるとは考えていません。脳、そして心は個人差がかなり大きな部分だからです。だからこそ、それぞれに個々の「ととのう」ポイントがあると考えています。
今回は「普通の瞑想はじっとしてられない」という方に脳科学の観点から見て「マッサージ」を瞑想的効果も合わせてご紹介したいと思います。
ADHD・多動傾向がある方のおすすめ瞑想方法とその研究については
下記記事でも紹介していますのでぜひご一読ください
脳から見た「心の旅」と「今ここ」
脳科学の世界では、デフォルトモードネットワーク(DMN)と呼ばれる脳内ネットワークが注目されています。
これは、何も特別な作業をしていないとき、つまり「ぼーっとしているとき」に活発になる脳の領域です。イェール大学の研究によれば、このDMNは私たちが過去を振り返ったり、未来を想像したり、自分について考えたりする「マインドワンダリング(心の彷徨)」と深く関係しているのです。
このDMNやマインドワンダリングは、最近"悪いモノ"のように扱われることがありますが、マインドワンダリング自体は、本来決して悪いものではありません。例えば「突然アイデアが降ってくる」などの体験はDMNと大きく関連しているとも言われていますし、人間の創造性を司っている機能だと言えるでしょう。
ただ、DMNが過度に活性化している状態が続くと、気づけば心配事や後悔、将来への不安といった思考に捕らわれてしまうことがあります。また、ADHD傾向を自覚している方だと、あれこれ考えが湧き出てきて、収集がつかなくなるような状況もこの状態に近いと言えるでしょう。
DMNが過度に活性化していると、脳のエネルギーを大きく消費することがわかっており、いわゆる"脳疲労"と言われる状態を引き起こす原因になるとも言われています。
ハーバード大学の調査では、私たちは起きている時間の通常約50%を「今この瞬間」以外のことを考えているという結果も出ています。そして興味深いことに、心が彷徨っている時間が多い人ほど、幸福度が低い傾向にあるそうです。
瞑想がDMNを静める仕組み
ブラウン大学やオックスフォード大学の複数の研究によれば、瞑想の実践者は瞑想中だけでなく、普段の生活においてもDMNの活動が低下していることが分かっています。特に経験豊富な瞑想者ほど、この傾向が顕著でした。
つまり、瞑想は、脳に「DMNが活性化しすぎない」訓練をさせているのです。
呼吸に意識を向け、心が過去や未来へ彷徨い始めたら、優しくそれに気づいて、また「今」に戻ってくる。この繰り返しが、DMNの過剰な活性化を抑える効果があるのです。
でも、ここに一つの大きな問題があります。
この「気づいて戻ってくる」という静かなプロセスが初心者、特に、普段DMNを過活性化させている人には難しく、場合によっては不安を増幅させてしまうことがあるようです。
じっとしていればいるほど、これでいいのかと不安になってしまったり、かえって思考が暴走してしまうという経験をした方は、実は多いのではないでしょうか。
マッサージの脳科学的効果
ここで注目したいのが、今回のテーマである、マッサージの効果です。
オタワ大学の研究チームがマッサージされている間の人間の脳をfNIRSで調査したところ、DMNの特定領域の活動を調整することが確認されたのです。特にスウェーデン式マッサージのような、ゆっくりとしたストロークと適度な圧を伴うマッサージはその効果が大きかったとのこと。
さらに興味深いのは、同じパターンの圧とストロークを木製の器具で行った場合、脳への影響はほとんど見られなかったのです。つまり、人の手で触れられるという体験そのものが、脳に独特の影響を与えている可能性があります。
他にも、マッサージ中にはアルファ波が増加し、ベータ波が減少することが複数の研究で確認されています。これは、脳がリラックス状態に入っている時の特徴的なパターンです。
さらに、ギリシャのテッサリア大学の最新研究では、リラクゼーション系のマッサージを受けた後、実際に脳の覚醒状態が低下し、より深い休息に入りやすくなることも示されました。
なぜマッサージが「瞑想的」になり得るのか
実はこの記事はとあるZONEメンバー様から「じっと座ってやる瞑想は続けられなかったけど、マッサージは継続して通えている。マッサージは瞑想じゃないんですか?」という質問をいただいて作成している記事になります。
自身に合ったメディテーションを探しておられる中でこれに類似した気づきをされている方が多く「どうしてマッサージ中はじっとしていられるのか」についてまとめてみましょう。
一つは、身体感覚へ自然と意識が向くという点です。
瞑想では「呼吸に意識を向けましょう」と言われますが、通常から多くのことをこなしている人にはこれでは刺激が弱く、DMNが活性化したりして別のことを思いつくことが多いと考えられます。
マッサージを受けているとき、私たちの意識は自然と、触れられている部分の感覚に集まっていきます。温かい手の感触、筋肉がゆっくりとほぐれていく感覚、心地よい圧。これらの身体感覚によって上記の実験結果からも示されているようにDMNの暴走が抑制され、思考の暴走を静かに鎮めてくれるのです。
もう一つは、受動的な体験であることです。瞑想では「自分で意識をコントロールする」ことが求められます。でもマッサージでは、ただ受け取るだけでいい。その受動性が、かえって心を「今」に留めやすくしているのかもしれません。
そして忘れてはいけないのが、生理学的な変化です。マッサージによって副交感神経系が活性化し、心拍数が落ち着き、呼吸が深くなります。さらに、ストレスホルモンであるコルチゾールが減少し、幸福感に関わるオキシトシンやセロトニン、ドーパミンといった神経伝達物質が増加することも、複数の研究で示されています
これらの生理学的変化は、プロセスは違えど、瞑想がもたらす脳科学的変化と非常によく似ている部分があるのです
「じっとできない」を責めなくていい
選択した瞑想メソッドができなかったことを、指導者に「覚悟が足りない」などと叱責されるような状況も何度かお聞きしました。
指導者を目指しているだとか、そのメソッドを体系的に学んで取得したいというのであればその叱責を受け止めるべきかとも思いますが、ZONEは、ご自身がより良く前向きに生きたいと思って選択しただけであれば「合わなかった」と他の方法に乗り換えるのも良いかと思います。
あなたがよりよく生きるために大切なのは、自分に合った方法で最終的に「今ここ」にアクセスする道を見つけることです。
ある人にとってはそれが坐禅かもしれないし、ある人にとってはヨガかもしれない。そして、ある人にとってはマッサージがその入り口になるかもしれないのです。
マッサージを通じて、思考から離れて身体感覚に意識を向ける体験を重ねることで、徐々に「今この瞬間に留まる」感覚が育っていき、以前はできなかったメソッドを実行できるようになることもあるでしょう。
自分の心と体が心地よいと感じる方法を見つけることが、何より大切だと思うのです。
ZONEと一緒に、あなたの「心地よい」を探しませんか
ZONEでは、脳科学の知見を大切にしながらも、一人ひとりの体験や感じ方を何より尊重したいと考えています。
「瞑想は苦手だけど、心を落ち着けたい」「じっとしているより、何か身体的な感覚があるほうが集中できる」そんな方にとって、もしかしたらマッサージという選択肢が新しい発見につながるかもしれません。
あなたにとっての「今ここ」へのアクセス方法は、何でしょうか。もし興味があれば、ぜひZONEで一緒に探してみませんか。
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参考文献・関連リンク
瞑想とデフォルトモードネットワーク研究
Meditation leads to reduced default mode network activity beyond an active task
Impact of meditation training on the default mode network during a restful state
The default mode network as a biomarker for monitoring the therapeutic effects of meditation
From State-to-Trait Meditation: Reconfiguration of Central Executive and Default Mode Networks
マッサージと脳科学研究
Neural correlates of a single-session massage treatment
Body Massage Performance Investigation by Brain Activity Analysis
Massage positively influences daytime brain activity and reduces arousal state in poor sleepers
Brain Reward Activity during massage: A functional neuroimaging investigation
デフォルトモードネットワーク概説
Default Mode Network - Psychology Today
Default mode network - Wikipedia
その他参考資料
The Science Behind Massage: How It Impacts Your Brain and Body
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