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脳波計について2026年5月29日

脳波プログラミング入門:Muse 2 / Muse S Athena で簡易BCIを始める前に

脳波プログラミング入門:Muse 2 / Muse S Athena で簡易BCIを始める前に
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「ZONEで取り扱っているデバイスで、自分の脳波を使ったプログラムを書いてみたい」

こんにちは。ZONEです。

普段は瞑想やサウンドバスなど「自分の状態を知る」用途で取扱機種をご紹介していますが、先日お客様から「Muse 2 の生データを Python で取り出して、脳波でボタン操作を割り当てる簡易BCI(Brain-Computer Interface)を作りたい」というお問い合わせをいただきました。

簡易研究・プロトタイピング目的での導入を検討されている方向けの情報は、これまでまとめてご紹介する機会がなかったので、今回いただいたご質問への回答をベースに、コラムとして整理してみました。同じような関心をお持ちの方の参考になれば幸いです。

1. Museシリーズは「脳波研究の標準エコシステム」に乗っている

意外と知られていないことですが、Muse シリーズは『LSL(Lab Streaming Layer)』という脳波研究のデファクト標準プロトコルに対応しており、Python の脳波解析ライブラリ群(pylsl、MNE-Python、MNE-LSL 等)と組み合わせて使えます。

つまり「Muse 2 で書いたコード」と「他の脳波デバイスで書いたコード」がだいたい同じ作法で書けます。Muse個別の知識というよりは、脳波研究全体の知識資産がそのまま使える、というのが大きなメリットです。

具体的には:

  • LSL(Lab Streaming Layer)』:脳波・生体信号の標準ストリーミングプロトコル
  • MNE-Python』:脳波解析の代表的なオープンソースライブラリ
  • pylsl / MNE-LSL』:PythonからLSLに接続するためのライブラリ

参考URL:

LSLエコシステム:Muse から Python までの脳波データの流れ

2. Muse 2 と Muse S Athena の仕様比較

開発用途で気になる「測れる脳波の場所と精度」の観点で整理すると、両機種は電極配置・サンプリング周波数が同等で、内部解像度と付加センサーに差があります。

項目Muse 2Muse S Athena
EEG電極位置TP9 / AF7 / AF8 / TP10(前頭2点・耳上2点)同上 + 増幅補助4ch
EEGサンプリング256Hz256Hz
ビット深度12-bit14-bit
PPGあり64Hz / 20-bit
加速度・ジャイロあり52Hz / 16-bit
fNIRS(脳血流)なし64Hz / 20-bit
装着硬めヘッドバンド型柔軟な布バンド型

重要な点は、両機種ともに電極位置は同じ「前頭+耳上」であるということです。研究的に「測れる脳の領域」は同等で、違いは内部解像度・付加センサー・装着感に集約されます。

装着面で言うと、Muse 2 は硬めのプラスチック製で、着席姿勢の短時間利用向けです。横になると電極が浮きやすく、耳裏センサーが枕に当たるため、寝姿勢での使用には適しません。一方 Muse S Athena は柔軟な布バンドで、寝姿勢・長時間装着にも対応します。

3. 生データの取得とPCへのリアルタイム転送

Muse 2 の場合

  • Mind Monitor』(有料アプリ):CSV形式(Excel互換)で記録・書き出し。スマホ単体で完結
  • muselsl』(無料・OSS Pythonライブラリ):LSL経由でEEG / PPG / 加速度 / ジャイロをリアルタイム取得
  • BlueMuse』:Windows 10向けのLSLストリームGUI

Mac / Linux なら muselsl をコマンドラインから、Windows なら BlueMuse のGUIから起動する形が王道です。

参考URL:

Muse S Athena の場合

  • Mind Monitor』v2.4.0 以降で対応
  • OpenMuse』:Muse S Athena 専用の Python ライブラリ。Python + MNE-LSL でEEG / fNIRS / PPG / 加速度 / ジャイロをストリーミング・記録・可視化

Muse S Athena は2025年3月発売の新機種ですが、開発者コミュニティの対応は早く、専用ライブラリも整備されています。

参考URL:

4. よくある質問(上級者向け)

Q1. Muse 2 で SSVEP(点滅刺激→脳波分類)は使えますか?

率直にお答えすると、Museシリーズ全般で SSVEP はあまり得意ではありません

SSVEP は本来、後頭部(O1 / O2 / Oz など視覚野直上)で最も強く出現する信号ですが、Muse の電極はいずれも前頭と耳上にあります。前頭電極でも弱いSSVEP成分は検出される研究例はありますが、刺激周波数の自由度や分類精度の面で、後頭部電極を備えた他社デバイス(OpenBCI等)と比較して不利な構成です。

SSVEP用途であれば、後頭部電極を持つデバイスを選定されることをおすすめします。

国際10-20法の電極マップ:Muse電極(緑)とSSVEPに必要な後頭部電極(紫)の位置関係

Q2. 顎の食いしばりや瞬きでボタンを割り当てたいです

こちらは Muse 2 / Muse S Athena ともに非常に扱いやすい領域です。

  • 顎の食いしばり(jaw clench):耳上の TP9 / TP10 が下顎の筋活動を強く拾います。閾値判定で容易に「ボタン押下」相当の信号として実装できます
  • 前頭筋の動き(眉上げ等):AF7 / AF8 が額の筋電を捕捉します。顎よりやや弱いですが、別ボタンとして組み合わせも可能
  • Eye Blink(瞬き):AF7 / AF8 が目に近いため、瞬きは非常に大きな波形として出現します。意図的な強い瞬きと自然な瞬きを振幅で分けるシンプルなロジックで実用化可能です

簡易BCIで最も実装しやすいのは、顎クレンチ+強い瞬きの組み合わせでしょう。

参考ライブラリ:

顎クレンチ時のTP9/TP10波形と通常時の波形の比較イメージ

Q3. リアルタイム転送の遅延はどれくらいですか?

LSL経由でMuseから受信する場合、Bluetooth LE の特性上、おおむね20〜50ms程度の遅延が一般的です。「人間の知覚に対して即時操作」と感じられるレベルで、ボタン操作用途では十分実用範囲です。

Q4. Muse 2 と Muse S Athena、結局どちらがいいですか?

用途別に整理すると以下のようになります。

  • 着席で短時間、コスト重視、情報量重視で始めたい → Muse 2
  • 横になって使いたい、長時間装着したい、14-bit解像度や補助チャンネルやfNIRSも触ってみたい → Muse S Athena

ボタン操作のような簡易BCI用途であれば、サンプリング周波数・電極位置が同等のため、両機種の基本性能差は限定的です。装着姿勢と付加機能のニーズで選んでいただくのがおすすめです。

Q5. FocusCalm や Oxyzen でも開発できますか?

FocusCalm』は端末側で計算済みのスコアのみ取得可能で、生EEGデータは取得できません。BCI・研究用途には不向きです。

Oxyzen(旧Zentopia)は瞑想・睡眠状態の可視化用途に最適化された構成で、開発・BCI用途で確実な選択肢は現状 Muse シリーズ となります。

Q6. 「最新機種だからアプリ未対応」が心配です

主要なサードパーティ製ツール(Mind Monitor、OpenMuse 等)は Muse S Athena に既に対応済みです。発売(2025年3月)から開発者コミュニティの対応は急速に進んでおり、現時点で開発に必要な環境は揃っています。

5. まとめ:脳波プログラミングを始める方へ

Muse 2 / Muse S Athena は、いずれも LSL経由でPythonからリアルタイムにEEGデータを受信でき、開発・簡易研究の入口として十分な選択肢です。

簡易BCI(脳波ボタン操作)であれば、SSVEPよりも顎クレンチや瞬きをトリガーにする方が現実的で、Museシリーズの電極構成と相性が良いです。

「測れる場所」は両機種同じ前頭+耳上です。装着姿勢と付加機能(fNIRS・14-bit解像度)のニーズで Muse 2 / Muse S Athena を選び分けてください。

ご相談・お問い合わせは contact@zonebrain.co.jp まで。

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