脳波アプリ、スマホだけで測れると思っていませんか?mind monitorと専用デバイスの違いを解き明かす
こんにちは。ZONEです。
「脳波アプリ」 という言葉、聞いたことはありますか?
スマートフォンで自分の脳の状態を見る、という発想そのものを指す言葉です。アプリストアで 「脳波」 と検索すると、計測を目的にしたものから、脳波に働きかけると謳う音や映像のものまで、性格の違うアプリが同じ棚に並びます。
なかでもよく名前が挙がるのが 「mind monitor」 です。Muse(ミューズ)というヘッドバンド型の脳波デバイス向けの解析アプリで、App Store と Google Play の両方で配信され、日本国内でも検索されています。
ここで、ひとつ確かめておきたいことがあります。スマホひとつあれば脳波が測れる、そう思っていませんか?
今回は、mind monitor を入り口にして、アプリと専用デバイスのあいだに何があるのかを順番に見ていきます。
「脳波アプリ」って、何のこと?

ひとくちに脳波アプリと呼ばれていますが、中身は大きく2種類に分かれます。
① 脳波デバイスと組んで、データを表示・記録するアプリ
ヘッドバンドなどの機器とBluetoothでつながり、そこから届いた信号をグラフにしたり、ファイルに保存したりします。mind monitor や、各デバイスの公式アプリがこちらです。
② 脳波そのものは測らず、脳の状態に働きかけると謳うアプリ
特定の周波数の音や光を再生するタイプです。体験としては意味があるかもしれませんが、あなたの脳波を読み取っているわけではありません。
検索して並んだ画面では、この2つは見分けにくいことがあります。「測るのか、流すのか」。ここを最初に確認しておくと、選び方がはっきりします。
mind monitor は、何をするアプリなのでしょうか

mind monitor は、Muse社の公式アプリではありません。個人の開発者がつくった、Museヘッドバンド専用のサードパーティ製アプリ です。
できることは、かなり専門的です。
- リアルタイムの脳波をグラフとスペクトログラムで表示する
- 生のマイクロボルト値(加工前の電位)を見る
- デルタ・シータ・アルファ・ベータ・ガンマといった周波数帯ごとに分けて見る
- 左右の脳、前後、センサー単位でデータを分けて見る
- CSV形式で書き出して、Excel・Python・MATLABなどで解析する
ここで大事なのは、mind monitor 単体では何も測れない ということです。Museヘッドバンドがあって、はじめて動きます。
つまり mind monitor は、「脳波を測るアプリ」ではなく「脳波デバイスから届いたデータを、加工せずに見せてくれるアプリ」 です。公式アプリが 「あなたはいま落ち着いています」 のように解釈済みの言葉で返してくれるのに対して、こちらは解釈前の数字をそのまま渡してくれます。
スマホひとつで、脳波は測れるのでしょうか

結論からお伝えします。スマートフォン単体では、脳波は測れません。
脳波(EEG)は、頭皮に置いた電極で、脳の神経活動にともなうごく小さな電位の変化を拾うものです。単位はマイクロボルト、つまり100万分の1ボルトの世界です。この信号を拾うには、頭皮に触れる電極 と、それを増幅する回路が要ります。
スマートフォンには、その電極がありません。カメラもマイクも加速度センサーも、頭の中の電気活動を読み取る部品ではありません。
ですので、「アプリを入れるだけで脳波がわかる」 という説明を見かけたときは、いったん立ち止まってみてください。その画面に出ている波形が、あなたの頭から来たものなのか、あらかじめ用意された演出なのか。ここが分かれ目になります。
脳波そのものの基礎については、EEG(脳波)の基本ガイドにまとめています。
研究の世界では、どう見られているのでしょうか

では、Museのような家庭用デバイスのデータは、信頼できるのでしょうか。
これは 「できる/できない」 の二択では答えにくい問いです。研究の報告も、両方向から出ています。
ヴィクトリア大学のKrigolsonらは、Museを使った視覚オドボール課題と報酬学習課題で、N200・P300といった事象関連電位や報酬陽性電位を検出できたと報告しています。安価な携帯型システムでも、条件を整えれば研究に使えるデータが得られる という方向の結果です。
一方でRattiらは、医療グレード2機種と家庭用2機種(Muse・Mindwave)の安静時脳波を比較し、Museは再検査時のばらつきが最も大きく、まばたきや筋の動きによるノイズの影響を受けやすかったと報告しています。
この2つは矛盾していません。「目的に合っていれば十分に使える。ただし測り方の影響を受けやすい」、というのが実際のところです。だからこそ、装着位置を毎回そろえる、同じ時間帯で比べる、1回の結果で判断しないといった前提が効いてきます。
なお、これらは研究上の評価であり、家庭用の脳波デバイスは医療機器ではありません。診断や治療の目的で使うものではない点は、押さえておいてください。
では、どちらを選べばいいのでしょうか

整理すると、選び方は 「何を知りたいか」 で決まります。
数字そのものを見たい方
生データを自分で解析したい、記録を残して比べたい、という場合は、Museヘッドバンドと mind monitor の組み合わせが向いています。CSVで書き出せるので、あとから自由に扱えます。ただし、波形の意味は自分で読み解く必要があります。
自分の状態を知りたい方
「いま集中できていたのか」「ちゃんと休めていたのか」 を知りたい場合は、解釈まで返してくれる公式アプリや、計測をサポートしてくれる場のほうが近道です。数字を読む訓練をしないまま生データだけ眺めても、判断材料になりにくいからです。
まず一度、体験してみたい方
いきなり購入しなくても構いません。ZONEのイベントでは、装着から計測、その場での読み解きまでをご一緒しています。取扱デバイスの違いはデバイス一覧に、Muse 2とMuse S Athenaは個別ページにまとめています。
おわりに

「脳波アプリ」 という言葉は便利ですが、その中身はアプリだけでは完結しません。測るための電極があって、届いた信号を見せるアプリがあって、それを読み解く視点があって、はじめて意味のある情報になります。
そして、脳波でわかることは、いまのところ脳のはたらきのごく一部です。数値が良い日も悪い日もありますが、大切なのは論文どおりの正解に近づくことではなく、自分の脳がどんなときに落ち着き、どんなときに立ち上がるのかを、自分で知っていくこと だと考えています。
一度データで確かめてみたい方は、ZONEの脳波計測サービスやイベントからお試しください。
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